北ア常念山脈(長野) 蝶ヶ岳(2677m) 2022年6月25日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 3:03 三股駐車場−−3:15 林道終点−−3:25 吊橋−−3:34 力水−−3:42 ゴジラの木−−4:28 まめうち平−−5:02 蝶沢−−6:18 蝶ヶ岳 6:32−−7:21 蝶沢−−7:49 まめうち平−−8:28 力水−−8:34 吊橋−−8:41 林道終点−−8:51 三股駐車場

場所長野県安曇野市
年月日2022年6月25日 日帰り
天候小雨後曇後晴 稜線は西寄りの爆風
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場三股の駐車場(第一駐車場)を利用。ハイシーズン前だが下山時はほぼ満車だった
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望晴れれば大展望
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コメント梅雨前線が近く等圧線が密で南西の爆風予報のため、山頂直下まで風がブロックされる蝶ヶ岳へ。下手をするとずっと雨かと覚悟していたが早朝にはぱらつく程度に収まり雨具は使わなかった。1ヵ月前は残雪がたっぷりあったが今回は雪を踏んだのは2,3歩で完全に消えていた。下界で強風だったので稜線は予想通り爆風状態で体を斜めにして歩く状態で、蝶ヶ岳ヒュッテのテント場でもテントを張るのに苦労しそうな状況だった。オサバグサの開花はほぼピークで森林限界でもボチボチと花が咲き始めていた


蝶ヶ岳から見た北半分の展望。南西の湿った強風で槍穂は終始ガスの中。南側はガスに覆われて展望皆無


三股駐車場。いつもトイレは明るい 林道終点の登山指導所
三股。今回は直進 蝶沢の吊橋
力水(最終水場) ゴジラの木
午前4時。明るくなってきた 常念岳山頂は雲の中だが思ったより雲は高い
樹林帯の中でも4時15分でライト不要な明るさに まめうち平
上部斜面に直射日光が。天気は期待できそう ツツジ。細かな種類は不明
蝶沢。雪は完全に消えていた 蝶沢から見た常念岳。山頂の雲が取れてきた
サンカヨウ オオバミゾホオズキ
安曇野は晴れている ショウジョウバカマ
今年初のオオバキスミレ エンレイソウ
標高2350m付近。芽吹きの季節 ショウジョウバカマ群落
イワカガミ ミツバオウレン。このコースでは少数派
ハクサンコザクラかと思ったがオオサクラソウ 咲き掛けのシナノキンバイ
標高2550m付近。時々ガスがかかる 大滝山分岐
お花畑だけ雪が残っていた キヌガサソウ
ミヤマカタバミ ハイマツ帯に出る前に強風に備えて防寒装備装着
テント場。土曜朝でもテントが全く無いのは珍しい 爆風の中、蝶ヶ岳山頂へ
雲が多いが大天井岳までは見えている 1ヵ月前は凍り付いていたカメラ
蝶ヶ岳山頂 ミヤマキンバイ
安曇野より南側がずっとガスがかかって見えなかった テント場のみシナノキンバイが開花していた
テント場のイワカガミ ミネズオウ。数は少ない
コケモモはまだ咲いていなかった ヒメイチゲ
頚城山塊は晴れている模様 オオカメノンキ
ミヤマカタバミ 天気はいいのだが爆風は見えない
オサバグサ。たくさん咲いていた ゴゼンタチバナ
緑色の花のゴゼンタチバナ まめうち平
マイヅルソウ群落 ゴゼンタチバナ群落
今週もイチヨウラン発見! イチヨウランの葉は名前通り1枚
ズダヤクシュ 樹林の隙間から常念岳
ユキザサ クルマムグラ
シロバナニガナ 雰囲気はミヤマカタバミに似ているが葉が異なる。タニギキョウ?
ギンリョウソウ ミヤマカラマツ
力水 ラショウモンカズラ。もう最終盤
おそらくコンロンソウ セリ科だけは確か
オドリコソウ 林道終点。今週は車は3台あった
三股駐車場。ほぼ満車だが数台の空きあり


 今週末も先週末同様に天候がイマイチ。長野では下界は晴れの予報だが日本海側の梅雨前線に近く、等高線が密で下界でも強い南西の風が予想された。これは南から入る湿った風で、山にぶつかると雲が湧いて稜線はガスの中に入るパターンである。おまけに下界で風が強い場合はアルプスの稜線では爆風であろう。南西の爆風の中を歩く距離を最短にできるコースは三股から蝶ヶ岳しかないので、1か月ぶりに蝶ヶ岳を目指すことにした。前回も同じ理由で蝶ヶ岳を選択して展望を楽しめなかったが、今回も同様だろう。まあ、蝶ヶ岳は年に何度も登っているのでいいか。

 金曜夜の三股駐車場の入りは2週間前よりは多かった。2週間前の予報が悪すぎたからなぁ。今回は時間経過と共に多少は雨の確率が低くなる予報なので、いつもの午前2時出発ではなく1時間遅れの午前3時とした。これでも登りの時間帯はずっと雨に降られていても不思議ではなく、山頂到着時に雨が上がるかどうかくらい。今回は強風の影響で傘が使えない可能性が高く、湿った高温の風で最初から蒸し暑い状態でゴアを着て歩くと汗だくになってしまうため、できるだけ雨は避けたい。下手をすると雨で濡れるのと汗で濡れるのとで変わらないくらいになってしまう。

 駐車場到着時は雨は降っていなかったが強風で車が揺れるほど。こんな谷間でこの風では稜線ではどれほどの強風だろうか。夜中は風は止んだが強い雨。これは予報の範疇なので気にしなかったが、この時間帯に上がってきた車の中にはそのまま戻る車も見られた。午前2時過ぎに起床すると僅かな雨。この程度なら傘は不要だろうと朝飯を食って出発したが、忘れ物に気付いてゲート付近から2度も戻ることになった。僅かに雨粒が落ちているが雨具が必要なレベルではなかった。

 林道終点には3台の車あり。前回、前々回は1台だったが夏山シーズンが近づいて蝶ヶ岳ヒュッテ従業員の人数が増えたのだろう。吊橋を渡り力水で水を少々補給。今の時期なら蝶沢で水が補給可能だろうと予想して満タンにはしなかった。まあ、今回の予想天気では晴は期待できないし強風で体感温度は低いだろうから、水の消費量は少ないだろうけど。前回は水場周辺はニリンソウとラショウモンカズラが多数見られたが終わってしまい、今はコンロンソウが見られる程度であった。

 「ゴジラの木」を通過して尾根に取り付いて高度を稼ぐ。幸いにして雨は上がり、この後に雨が落ちてくることは無かったが既に風が強い。今日は予想通り気温が高く今年初めて出発時から半ズボンだったが全く寒さを感じなかった。傾斜がきつくなって運動量が上がった状態で風に当たると心地よかった。まだ真っ暗に近いが樹林の切れ間から常念岳のシルエットが見えたが、思ったよりも雲の高さは高くて前常念は雲の下で常念岳山頂付近だけが雲の中。これなら蝶ヶ岳には雲がかかっていない確率が高く、もしかしたら私の予想よりも天気が期待できるかも。

 「まめうち平」にかけての尾根の登りでは一か月前は咲いていなかったゴゼンタチバナ、マイヅルソウが多数咲いていたが、前回蕾だったイワカガミは既に咲き終わっていた。「まめうち平」に近付くとオサバグサが見られるようになり、蝶沢の手前くらいまでたくさんのオサバグサが咲いていた。ちょうど花のピークらしかった。ここはカニコウモリも多数見られる場所だが、カニコウモリの葉っぱはたくさん出ているが花はまだ咲いていなかった。

 一か月前は蝶沢は残雪に覆われていたが今は雪は全く無く、登山道が横断する箇所は伏流化して水は流れていなかったが、10mくらい上流で水が出ているので給水可能だった。ただし、この時期でこの水量ではこれから雨がたくさん降らない限りはすぐにここでの給水は不可能になりそうだ。ちなみにこの文章を書いている6/27の時点で関東甲信は梅雨明けしたとみられるとの発表があり、蝶沢での水補給はもう無理そうだ。例年より1ヵ月近く早い梅雨明けで、まだ山小屋が開いていない場所も多い。種池山荘もそうで、柏原新道はまだ残雪が多く通行は危険なままだろう。

 蝶沢から見た常念岳は山頂にぎりぎり雲がかかるかどうかまで雲の高さが上がっていて天気は確実に上向きらしいが、雲の流れは速く強風は確実だ。

 蝶沢を過ぎるとこれまでは咲き終わりの株しか見られなかったサンカヨウやエンレイソウがまだ咲いていた。一か月前はこの辺りから残雪が多くなったが今は全く残雪は無い。ちなみに今回は歩くのに支障がある残雪は無いと予想してアイゼン、ピッケルとも持ってきていない。

 雪が消えて地面が出ているので、真夏のシーズンよりは少ないが前回よりは花は多い。ショウジョウバカマ、オオバミゾホオズキ、イワカガミ、オオバキスミレ、ミツバオウレン、オオサクラソウなどが見られた。三股から前常念のコースではミツバオウレンが多数見られるがここでは少数派。オオサクラソウは最初はハクサンコザクラかクリンソウかと思ったが、クリンソウはこんな高いところにはいないし、ハクサンコザクラにしては花が大きいし背も高かった。帰宅後にネットで調べてオオサクラソウと判明した。ちなみにこのコースでオオサクラソウが咲いているのを見たのは初めてで、過去にはこの花の時期に登っていなかったということだろう。

 森林限界が近くなってくると時々周囲にガスが流れるようになり、天候が本当に回復傾向か怪しくなってきた。ただしガスがかかるのは短時間で、基本的には頭上は曇り空であった。東に見える安曇野盆地の水田は太陽光を反射して光っていて晴れているのが分かる。雲がかかっているのは北アの稜線だけらしいがこれは想定通り。まだ風は稜線にブロックされて直接吹き付けることはないが、稜線を越えて巻き込むような風が降りてくるようでそれなりの強さの風が吹きつける。この時期としては気温は高めで湿気も高いが、日差しが無くて風があるので体感的には寒さを感じるほどで、手袋+腕カバーを着用した。

 森林限界近くでは咲き始めのシナノキンバイが登場だが数は少ない。ヒメイチゲは多く見られた。前回は雪に埋もれていた大滝山分岐は雪は無く、そのすぐ上のお花畑の斜面は残雪に覆われていたが登山道の雪はほとんど無く、雪を踏んだのはここの2,3歩だけであった。

 ハイマツの谷筋でキヌガサソウの花が見られる場所でゴアを着込んで防寒装備着用。この先のハイマツ帯から強風になるのは確実だからだ。手袋は風を通さない防寒テムレスに切り替えた。予想通り谷筋を出てハイマツの斜面に入ると強風が吹きつけて一気に寒くなった。ここでもまだ稜線がブロックして直接は風が吹きつけていないはずだが、それでこの風では稜線は確実に爆風だろう。

 通常の土曜早朝なら少なくとも数張のテントがあるはずだが今日は珍しくゼロ。テント場は稜線東側にあるので風は弱いのだが、それでも今日は強風で一人でテントの設営/撤収は困難だろう。今日これから登って幕営する人は苦労しそうな。予報では明日にかけて天気図は大きくは変わらないので、強風もあまり変わらないだろう。

 テント場から稜線に出ると予想通りの爆風で、体を風上側(西側)に体を傾けて歩く状態。でも耐風姿勢を取るほどではなかったのは意外で、爆風ではあるが行動不能なレベルではなかった。でもこの風速に長時間吹かれ続けるのは相当きついだろう。こんな風速でもヒュッテから常念岳方面へと縦走に向かった10人近くの大パーティーがいたのは驚いた。1ヶ月前にはレンズが凍り付いていた野生動物撮影用のセンサ付き野外カメラはまだ設置してあったが、もちろん今回は氷は無い。風は強いが気温はおそらく+10℃近くあると思う。

 蝶ヶ岳山頂は稜線よりも風は弱まるが、それでも休憩するのは強すぎる風であり、休憩は山頂東側のハイマツに隠れるように座り込んだ。山頂は時々ガスがかかるがかかっていない時間の方が長かったが、槍穂方面は分厚い雲の中に入って全く見えなかった。見えるのは赤岩岳から大天井岳、常念岳にかけてのみであった。東や南の大滝山方面はここより標高は低いのに雲が沸き上がり、八ヶ岳や南アルプス、木曾御嶽、乗鞍岳方面は全く見えなかった。北東側の頚城山塊や黒姫山、飯縄山辺りまでは見えていたが、志賀高原の山々も雲の中。それでも予想よりも天気は良く、雨に濡れずに済んだのは助かった。

 この天候は短時間で大きく変わるとは思えず、気温は高くとも強風で寒いので長時間の休憩は無理であり、パンを齧って短時間の休憩で下山を開始した。

 山頂付近ではミヤマキンバイが咲き始めていた。テント場の西斜面は夏場はお花畑になるが、シナノキンバイが大きな黄色い花を完全に開いていた。イワカガミもちょうど盛りで、ミヤマキンバイ、少数のミツバオウレンが混じっていた。テント場を通過してハイマツの登山道には僅かばかりのミネズオウ。コケモモはたくさん見られたが花はまだ蕾であった。

 往路で防寒装備を着用した谷間以降は風が大幅に弱まるが体がまだ温まらないので防寒装備を着たまま歩き、寒さを感じなくなってから脱いだ。それまでに単独男性とすれ違った。今週は下界の天気予報はいいのですれ違う登山者は結構多かった。中には幕営装備と思われる大ザックを背負った登山者がいたが、あの強風では幕営は無理とは言わないが設営/撤収とも大変で、テントが一晩中強風に煽られて快適とは言えないだろう。樹林の切れ間から見える常念岳は雲はかからず上空も青空で快晴だが、爆風は目に見えないのであった。

 例のごとく下山は花を探しながらだが、登りと違って歩く速度は自然に早くなるので小さな花を全て見落とさず歩くのは難しい。時折足を止めてじっくり探すのは意味があった。というのも2週間前の常念岳に続いて希少種のイチヨウランを発見できたからだ。標高1830m付近の樹林帯で地面は他の植物に覆われているので、目立たない色の小さな花は歩きながらでは発見できなかったであろう。今回は花だけでなく地面に張り付いた1枚の葉もしっかりと確認。ここには3株まとまっていた。

 標高が落ちるとズダヤクシュが目立つがもう花は終盤であり、大半が実が付いていた。日の出前よりは風が弱まったようで樹林帯に入るとほぼ無風状態となり、日差しも強くなって高度が落ちると徐々に暑さを感じるようになった。それでもまだ真夏よりは気温は低く、まだ登山口付近での水浴びは不要だった。

 三股駐車場に到着すると完全満車ではないが残すスペースは数台程度でほぼ満車状態。車のナンバーは私のような地元ばかりではなく全国区だ。今は頭上は青空で見上げる蝶槍もすっきりと晴れて、夜中の天候と比べれば段違いの好天。ただし稜線の強風は変わらないだろうが、これはここからでは分からない。これから出発するパーティーもいるが、予報では日中は大気の状態が不安定でお昼頃から雷雨の可能性がある。あの強風+雨は低体温症の危険があり、もっと早く行動を開始すべきだろう。雷雨は局地的な現象なので蝶ヶ岳で降らない可能性はあるが。

 着替えていると1台車が上がってきて、車に乗り込んで林道を下っているとさらに1台の車が上がっていった。これでも夏山シーズン真っ盛りよりは車は少ない。しかし今年は6/27(月)に記録的に速い梅雨明けとなり(正確にはまだ確定ではないが)、これから一気に登山者が増える可能性が。もしそうなら通常なら梅雨の時期にしか見られない花が見られるチャンスであり、貴重なシーズンとなるだろう。

 

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